2022年(令和4年)2月24日、ロシア連邦がウクライナに軍事侵攻し、本日までの間に、民間人を含む多数の犠牲者が出ていると報道されている。プーチン大統領は、核兵器による威嚇、及びその使用の可能性にも言及し、さらにロシア軍は、1986年の爆発事故で損傷した原子炉等が封じ込められているチョルノービル(チェルノブイリ)原子力発電所(廃炉)、及び、ヨーロッパ最大かつ世界最大級の原発であるザポリージャ原子力発電所等の原子力関連施設に対しても攻撃・占領を行った。
国際連合憲章2条4項は、国際関係における武力による威嚇又は武力の行使を禁じており、今回のロシア連邦による軍事侵攻はこれに明確に違反するものであって、断じて許されない。
とりわけ、原子力発電所は、これに対する攻撃が「危険な力の放出を引き起こし、その結果文民たる住民の間に重大な損失をもたらす」ことから攻撃の対象としてはならないとジュネーブ諸条約第1追加議定書56条1項に定められたものであり、原子力発電所への攻撃は、常軌を逸した暴挙というほかない。
ひとたび原子力災害が発生すれば、極めて広大な範囲に、長期的かつ深刻な放射性物質による汚染被害を引き起こし、多数の市民が避難を余儀なくされ続けるという事態に至らしめる。ロシア政府の核攻撃の示唆、及び同国軍隊の原子力関連施設に対する諸行為は、ウクライナ国民はもちろんのこと、ロシア国民を含む全世界の国民を、戦争による核兵器の使用及び原子力関連施設の破壊による深刻な被害の恐怖にさらすものである。
当連合会に属する福島県弁護士会は、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故の最大の被災地である福島県において活動する弁護士の団体として、ロシア軍による原子力関連施設に対する攻撃・占領に強く抗議しているが、当連合会としても、チョルノービル(チェルノブイリ)原発事故や福島第一原子力発電所事故のような惨事を人為的に惹き起こしかねない行為を絶対に容認できない。
日本国憲法は、前文で恒久平和主義を規定し、平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼し、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有していることを確認している。恒久平和主義の理念を掲げる憲法の下、基本的人権の擁護を使命とする私たち弁護士は、国際法に違反し、法の支配を蹂躙する今回のロシア連邦による軍事侵攻に伴う重大な人権侵害行為を、断じて許すことはできない。
当連合会は、今回のロシア連邦によるウクライナへの軍事侵攻を強く非難し、同国が国際法を遵守し、軍事侵攻と人権侵害行為を直ちに止めることを強く求めるとともに、日本政府に対し、この問題の平和的解決に向けた最大限の外交努力を行うよう求める。
2022年(令和4年)4月2日
東北弁護士会連合会
会 長 遠 藤 凉 一
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