1 仙台高等裁判所第2民事部(小林久起裁判長)は、2023(令和5)年10月25日、旧優生保護法に基づく優生手術を強制された被害者に対し損害賠償を命じた原審仙台地方裁判所の判決(本年3月6日)に対する控訴人(国)の控訴を棄却する判決を言い渡した。
本判決は、原判決に引き続き、旧優生保護法が、立法当時から、憲法13条、14条1項、24条2項に明白に違反することを認めた。その上で、国が違法な立法を行った上、それに基づく政策を継続し、差別や偏見を固定化することによって、被害者が損害賠償請求権を行使することを著しく困難にさせたと認め、このような重大な人権侵害の政策を推進してきた国が被害者の損害賠償権の消滅を主張することは、正義・公平の観点からも、権利の濫用として許されない、と判断し、被害者の請求を認めたものである。
2 これまでも、2022(令和4)年2月22日に大阪高等裁判所、同年3月11日に東京高等裁判所、そして、2023年(令和5年)3月16日に札幌高等裁判所が、いずれも国に損害賠償を命ずる判決を下し、また、各地方裁判所においても、熊本地方裁判所、静岡地方裁判所、そして本件の原審仙台地方裁判所も、それぞれ国に損害賠償を命ずる判決を下してきた。
3 この度の仙台高等裁判所の判決は、これらの多くの全国の裁判例と同様に、被害者の請求を認めたものである上、さらに旧優生保護法の違憲性を一層明確に認め、重大な人権侵害を行なってきた国が被害者の請求権の消滅を主張するのは権利の濫用として許されないと明確に判断した点において、高く評価できるところであり、本判決及びここに至るまでの上記判決の集積によって、長年にわたり重大な人権侵害を受けてきた旧優生保護法の被害者に対し、消滅時効や除斥期間の適用を制限すべきであるとの司法の判断は、大方固まったと言うべきである。また、本判決が、優生手術を受けた上に提訴に至るまでの長年の精神的苦痛を全体として評価し、一時金支給法で定められた一時金の額320万円を大幅に上回る額の慰謝料を認めたことからも、同法による救済が不十分であったことが一層明らかになったところである。
4 したがって、当連合会は、国に対し、本判決に対して上告せず一刻も早く本判決を確定させて被害者を救済することを求めるとともに、改めて一時金支給法を抜本的に見直し全ての被害者に対して被害を償うに足りる補償金を支払い、被害者救済のための制度を確立することを強く求めるものである。
2023年(令和5年)10月30日
東北弁護士会連合会
会 長 虻 川 高 範
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