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2024年12月14日

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選択的夫婦別姓制度の導入を求める会長声明

 当連合会は、2016年(平成28年)2月9日の会長声明において、民法第750条は、憲法第13条及び同第24条が保障する個人の尊厳及び婚姻の自由、同第14条及び同第24条が保障する平等権並びに女性差別撤廃条約第16条第1項(b)が保障する「自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利」及び同項(g)が保障する「夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)」を侵害するものであるとして、早期の改正を求めていた。上記声明発出後の国民の意識の変化や社会の変化等も踏まえて、改めて国に対し、民法第750条を早期に改正し、選択的夫婦別姓制度を導入することを強く求める。

憲法第24条第1項は、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有する」と定め、同条2項は「法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」として、婚姻における人格的自律権の尊重と両性の平等を定めている。これは、婚姻をするかどうか、いつ誰と婚姻をするかについては、当事者間の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべきであるという趣旨を明らかにしたものである(最高裁大法廷2015年12月16日判決)。そうであれば、夫婦双方が、婚姻後も、婚姻前の姓を維持できるとすることが、個人の尊重、夫婦間の本質的平等にかなう。

もっとも、民法第750条は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定めて夫婦同姓を義務付けており、現行制度上、夫婦双方が姓を維持する選択肢は認められていない。そのため、姓の変更を望まない者同士の場合は、婚姻をしないか一方が自己のアイデンティティ喪失を伴う改姓をするかの選択を余儀なくされる。そして現在、婚姻する夫婦の大部分が夫の姓を選択しており、多くの女性が職業上も社会生活上も様々な不利益を被っている。

 氏名について、最高裁判所は「人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成する」(最高裁第三小法廷1988年2月16日判決)と判示しているが、姓の変更を強制されない自由もまた、人格権の重要な一内容として憲法第13条によって保障されている。民法第750条は、婚姻に際し姓の変更を強制されない自由を不当に制限するものであり、憲法第13条に反する。

 また改姓するか否かは個人の信条に関わる問題であるが、民法第750条は、夫婦別姓を希望する人は、信条に反して改姓しない限り婚姻できないとするものであり、婚姻に際し同姓を希望する者と別姓を希望する者とを差別的に取り扱っている。このような差別的取扱いは合理的根拠に基づくものとは言えず、民法第750条は、法の下の平等を定めた憲法第14条にも反する。

 さらに、憲法第24条第1項が婚姻における人格的自律権の尊重と両性の平等を定めている趣旨にかんがみれば、民法第750条は、婚姻成立のために「姓の変更」という両性の合意以外の要件を不当に加重しており、当事者の自律的な意思決定に不合理な制約を課すものである。そして、家父長的な家族観・婚姻観や男女の固定的な性別役割分担意識等がいまだに無言の圧力として働き、新たに婚姻する夫婦のうち約95%で女性が改姓している実態がある。民法第750条は、事実上、多くの女性に改姓を強制し、その姓の選択の機会を奪うものであり、憲法第24条にも反する。

 1996年、法制審議会は選択的夫婦別姓制度を導入する「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申したが、実現されないまま既に28年が経過しているが、国会での議論が進んでいない。

最高裁判所は、2015年12月16日の判決及び2021年6月23日の決定で民法第750条を合憲としたが、これらの判断は、同制度の導入を否定したものではなく、法制度の合理性に関わる国民の意識の変化や社会の変化等の状況は、本来国会において不断に目を配り、対応すべき事柄であると指摘するとともに、選択的夫婦別姓制度の導入に関する最近の議論の高まりについても、国会において受け止めるべきであり、夫婦の姓に関する制度の在り方は「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならない」として、国会での議論を促したものである。

そして近時の世論や情勢においては、官民の各種調査において選択的夫婦別姓制度の導入に賛成する意見が高い割合を占め、全国の多数の地方議会、東北地方においても岩手県議会、青森市議会など複数の地方議会で同制度の導入を求める意見書が採択されている。また本年、日本経済団体連合会は、女性活躍の壁を乗り越えるために必要であるとして、選択的夫婦別姓制度を早期に実現することを求める提言を行っている。

2024年10月29日、国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)は、日本政府に対して、婚姻後の夫婦同姓が強制されている民法の規定を改正し、夫婦が婚姻後も別姓を選択できる制度を導入することを求める勧告を行った。このような、国連女性差別撤廃委員会による夫婦同姓制度を定めた民法の規定の改正を求める旨の勧告は、2003年、2009年、2016年に続いて実に4度目である。世界各国の婚姻制度を見ても、夫婦同姓を法律で義務付けている国は、日本のほかには見当たらない。民法第750条が、国際的にみて、女性差別撤廃条約第16条第1項(b)が保障する「自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利」及び同項(g)が保障する「夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)」を侵害するものであることは明らかである。

なお、社会的には旧姓の通称使用が拡大しているものの、通称使用を認めただけでは上記に挙げた憲法違反の点は根本的に解消されない。さらに、通称名と戸籍名の使い分けが必要となって混乱を招くことも多く、金融機関等との取引や公的機関・企業とのやり取り等に困難を抱えており、抜本的な解決策とはなっていない。

今、選択的夫婦別姓の導入を求める世論はかつてないほどに高まっており、選択的夫婦別姓制度の導入に向けて、既に機は熟しているというべきである。2024年10月29日に国連女性差別撤廃委員会から4度目の勧告がなされたにもかかわらず、国が、姓の変更を強制されない自由、婚姻の自由に反し、法の下の平等に反する重大な人権侵害を、これ以上放置することは許されない。

したがって当連合会は、国に対し、民法第750条を直ちに改正し、選択的夫婦別姓制度を導入することを改めて強く求める。

2024年(令和6年)12月14日

東 北 弁 護 士 会 連 合 会

会 長 竹 本 真 紀

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