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New2025年6月5日

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国際刑事裁判所の活動を支持し、法の支配の更なる強化を求める会長声明

  国際刑事裁判所(International Criminal Court: 以下「ICC」という)は、1998年に採択された国際刑事裁判所に関するローマ規程(以下、「ICC規程」という)に基づいて、ジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪及び侵略犯罪という「国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪を行った者が処罰を免れることを終わらせ、もってその様な犯罪を防止すること」(ICC規程前文)を目的として設立された、それらの犯罪に責任のある個人の訴追・処罰を任務とする普遍的かつ恒久的な国際刑事法廷である。

 ICC規程は2002年7月1日に発効し、2025年現在、その締約国・地域は125に及ぶ。

 日本は、ICC規程の起草時より、重大な犯罪行為の撲滅と予防、法の支配の徹底のためICCの設立を一貫して支持し、2007年10月1日にICCに加盟して以降、裁判官を継続的に輩出し、2018年3月からは赤根智子氏が裁判官を務め、2024年3月には日本人として初のICC所長に選出されている。

 また、外務省によれば、日本はICCの最大の分担金負担国であり、2024年については約36.9億円(分担率約15.4%)の分担金を負担し、被害者支援のための信託基金に対しても、2014年以降、累計108万ユーロ以上を負担している。

 この様に、日本は法の支配を重視する国際社会の一員として、これまで人材面・財政面でICCの活動を大きく支えてきた。

 ロシアによるウクライナ侵攻を受け、2022年3月、日本はICCの検察官に対し、戦争犯罪等の捜査を開始するよう求めて、ウクライナの事態を付託し、日本の他にも42か国が同様の付託を行っている。

 2023年3月17日、ICCはウクライナの事態に関連して、プーチン大統領らに戦争犯罪の疑いで逮捕状を発付したところ、ロシアはそれに反発し、報道によれば、赤根判事を含む逮捕状の発付の審理を担当した3名のICC裁判官を指名手配としたほか、ICCの主任検察官らを本人不在のままロシア国内で起訴している。

 これらに対して、赤根判事は「ICCの裁判官一同、これらに屈してはならないという気持ちで毎日の裁判業務に向かっている」と述べるとともに、「証拠に基づき法律的な手続きで責任を追及していくことが、戦争犯罪の抑止につながる」と訴えている。

 また、2024年11月21日、ICCはガザにおけるイスラエルとハマスとの間の紛争に関連して、イスラエルのネタニヤフ首相らに戦争犯罪などの疑いで逮捕状を発付したこところ、アメリカがそれに反発し、トランプ大統領は、2025年2月6日、ICCの職員などに対するアメリカへの入国禁止処分や資産凍結等の制裁を科す大統領令に署名している。

 これに対しても、赤根判事は、2025年2月7日、「ICCの独立性と公平性を損なうもので、深い遺憾の意を表明する」との声明を発表し、「残虐行為による何百万人もの罪のない被害者から正義と希望を奪う」と指摘した上で、「ICC加盟国や法の支配に基づく国際秩序に対する深刻な攻撃」であると非難している。

 同日、イギリス・ドイツ・フランスなどICCに加盟する79の国・地域もアメリカの大統領令に対して「法の支配を脅かす」と非難する共同声明を発出し、「ICCの独立性、公平性、および誠実性に対する揺るぎない継続的な支援を再確認する」と述べた上で、「制裁は、ICCが現地事務所を閉鎖せざるを得なくなる可能性があるため、現在捜査中のすべての事案に深刻な打撃を与える」と指摘し、「最も深刻な犯罪が免責されるリスクを高め、国際的な法の支配をむしばむ恐れがある」と訴えている。

 しかしながら、日本はこの共同声明に加わらず、ほかにICCを支持する、ないしは支援するような声明さえも発出していない。

 ICCは、上述のとおり世界中の多数の国・地域が加盟するICC規程に基づく国際法上の正統性を有する裁判所であるとともに、個人に対し独立・中立で普遍的な司法権の直接的行使という刑事法上の正統性を有する裁判所である。

 ロシアやアメリカはICC規程の非締約国であるが、ロシアやアメリカによる上述のような措置は、ICCに対する不当な圧力であり、ICCの独立・公正な活動を阻害し、国際社会における「法の支配」を脅かしかねないものであって、その様な措置が執られる状況が続けば、国際社会が「力による支配」の時代に逆戻りすることにもつながりかねない。

 上述のとおり、日本は、法の支配を重視する国際社会の一員であると標榜しており、また、ICCに対して多大な人的・財政的貢献を行い、その実効性を高めるよう尽力してきたにもかかわらず、日本政府が、ICCに対する不当な圧力に対して、反対の意思を表明せず、また、それらを撤回させるように外交努力をしないことは、到底看過できるものではない。

 そのため、当連合会は、ロシアやアメリカなどによるICC及びその裁判官、検察官、職員らに対する不当な圧力に強く反対するとともに、日本政府に対し、①ICCの独立・公正な活動を阻害するあらゆる行為に反対する意思を宣明し、②既になされている行為を撤回させ、将来もそのような行為がとられることがないよう外交努力を行い、③今後もICCに対して人的・財政的支援を継続し、その活動を支持していくことを求める。


2025年(令和7年)6月5日

東北弁護士会連合会 

会長 吉 田 瑞 彦


2025年5月17日

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日本学術会議法案に反対する会長声明

1 政府は、2025年3月7日、現行の日本学術会議法(以下、「現行法」という)を廃止し、日本学術会議の組織形態を、現在の国の「特別の機関」から、国から独立した法人格を有する組織としての特殊法人へと変更する日本学術会議法案(以下、「本法案」という。)を閣議決定し、衆議院に提出した。本法案は、同年5月13日に衆議院で可決され、今後参議院での審議が始まる。

  しかし、本法案は、以下に述べるとおり、学問の自由(憲法23条)に由来する日本学術会議の独立性と自律性を脅かすおそれがあり、極めて問題である。

2 そもそも、日本国憲法が思想良心の自由(憲法19条)や表現の自由(憲法21条)とは別に憲法23条で学問の自由を保障したのは、戦前の滝川事件(1933年)や天皇機関説事件(1935年)といった学問の自由が国家権力によって侵害された歴史への深い反省を踏まえ、また、学問の研究が、常に従来の考え方を批判して、新しいものを生み出そうとする努力であることから、学問の分野は特に程度の高い自由が要求されることによるものとされている。このため、学問の自由は、国家権力から干渉されることなく学問研究・発表等を行うことを保障している。日本学術会議は「我が国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させること」を目的とするナショナル・アカデミーであり(現行法2条)、その独立性と自律性は憲法23条に由来する。

3 ところが、本法案の内容は、以下に述べるとおり、日本学術会議の独立性と自律性に対する重大な脅威ともなりかねないものであり、極めて問題である。

(1)まず、基本理念について、現行法では、「科学が文化国家の基礎」「我が国の平和的復興への貢献」といった、歴史的な背景をも踏まえた、科学者としての決意が表現されていたが、本法案では、「人類共有の知的資源」「経済社会の健全な発展の基盤」という文言に変更されている。

(2)また、本法案では、学術会議が職務を「独立して」行うとされた現行法3条の文言が踏襲されておらず、法人の外部から、会員の選定や業務運営等を幾重にもチェックする制度を導入することが定められている。例えば、①会員以外の者から総会が選任する科学者を委員とし、会員の選定方針等について意見を述べる選定助言委員会(本法案26条、31条)、②会員以外の者から会長が任命する者を委員とし、中期的な活動計画や年度計画の作成、予算の作成などについて意見を述べる運営助言委員会(本法案27条、36条)、③内閣府に設置され、内閣総理大臣が委員を任命し、中期的な活動計画の策定や業務の実績等に関する点検・評価の方法・結果について意見を述べる日本学術会議評価委員会(本法案42条3項、51条)、④会員以外の者から内閣総理大臣が任命し、業務を監査して監査報告を作成し、業務・財産の状況の調査等を行う監事(本法案19条、23条)である。このような各機関の設置は、会員選考における独立性と自律性、及び活動面での政府からの独立性を損なうものであり、学問の自由に対する重大な脅威となりかねないものである。

(3)特に、新法人の会員の選任方法をみると、諸外国の多くのナショナルアカデミーが採用している標準的な会員選考方式であるコ・オプテーション方式(現在の会員が次期会員に相応しい科学者を推薦する方式)による選考方式が損なわれることにより、現在の日本学術会議との連続性が途絶えることとなり、時の政治権力から独立した立場で、普遍的俯瞰的観点から科学的助言を行うという現在の日本学術会議の基本的なあり方が継承されなくなることが危惧される。

すなわち、会員候補者の選考には、「会員、大学、研究機関、学会、経済団体その他の民間の団体等の多様な関係者から推薦を求めることその他の幅広い候補者を得るために必要な措置を講じなければならない」こととされ、さらに「行政、産業界等との連携による活動」等の活動実績を有する科学者が含まれるよう配慮することが求められるなど(新法案30条)、様々な制約が設けられている。加えて、新法人が発足する際の会員について、本法案では、現在の日本学術会議の推薦に基づいて内閣総理大臣が会員予定者125人を指名すると定められているが(附則3条1項)、その会員候補者を選考する候補者選考委員会の委員を現在の日本学術会議委員の中から選ぶ旨の規定は存在せず、また、候補者選考委員会の委員を会長が任命しようとするときは、内閣総理大臣が指名する有識者と協議しなければならないとされている(附則6条5項)。これでは、新会員の選考は、現行会員の推薦に基づくものではなくなるおそれがある。

また、新法人の発足時点で任期を残している現会員は、新法人の会員となるとされるものの、3年後に再任されることができないものとされていることから(附則11条)、上記のような会員の選任方法が実施されることにより、新法人は現在の日本学術会議との連続性が途絶えることとなりかねない。

   以上のような選考方法で選考された会員によって構成される新法人が、時の政治権力から独立した立場で、普遍的俯瞰的観点から科学的助言を行うという、これまで日本学術会議が果たしてきた役割を果たすことができるのかについては、大きな懸念がある。

(4)さらに、新法人の財政基盤については、「政府が、予算の範囲内において、会議に対し、その業務の財源に充てるため、必要と認める金額を補助することができる。」とされるにとどまっており(本法案48条1項)、ナショナル・アカデミーとしての安定した国家財政支出が確保されなくなることが危惧されるうえ、中期的な活動計画策定義務(本法案42条)の新設と相俟って、国、政府の側の期待に応える活動計画でなければ十分な補助が得られなくなるおそれも否定できず、活動面での政府からの独立性が損なわれることが強く危惧される。

(5)本法案には、以上のような問題点があり、十分に時間を掛けて慎重に審議しなければならないにもかかわらず、衆議院内閣委員会はわずか3日間の審議で採決しており、政府に対し日本学術会議の独立性、自主性及び自律性を尊重することなどを求める附帯決議がなされたものの、政府を含む外部の介入を許容する条文内容に修正は一切なく、本法案の問題を解消するものではない。

4 政府による日本学術会議の組織再編は、2020年10月の内閣総理大臣による6名の任命拒否に遡る。その後、日本学術会議の組織再編の議論が開始され、繰り返されてきた結果、本法案の提出に至っている。

  当連合会は、2020年10月30日、「日本学術会議会員の任命拒否に対する会長声明」を発出し、内閣総理大臣による任命拒否は思想統制的なメッセージとなる懸念があり、政権に批判的な研究活動や意見表明を萎縮させ、ひいては憲法23条が保障する学問の自由を侵害することにつながりかねないことを指摘し、6名の任命拒否について合理的な説明ができないのであれば任命拒否を撤回することを求めてきた。しかし、現在においても、政府は任命拒否の理由を示しておらず、任命拒否の撤回もされておらず、その問題を放置したまま日本学術会議の法人化を進めることも看過できない。

5 また、日本学術会議からも、2025年4月15日、日本学術会議第194回総会において、声明(「次世代につなぐ日本学術会議の継続と発展に向けて~政府による日本学術会議法案の国会提出にあたって」)が出されるとともに、国会に対して日本学術会議法案の修正を求める旨の決議がされているところである。

6 よって、当連合会は、日本学術会議の独立性と自律性を損なうおそれが高い本法案に反対し、参議院で問題点が改善されない限り廃案にすることを求める。

 

2025年(令和7年)5月17

東北弁護士会連合会 

 長  吉 田 瑞 彦


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