竹本真紀会長

 2024年(令和6年)度の東北弁護士会連合会の会長を務めることになりました竹本真紀(たけもとまさき)です。就任のご挨拶を申し上げます。
 東北弁護士会連合会(東北弁連)は、仙台高等裁判所管内の東北六県の各弁護士会で構成される弁護士会連合会です。東北六県の各弁護士会に所属する弁護士の総数は、2024年(令和6年)3月28日現在で、1092名(うち女性161名)です。各弁護士会の内訳は、青森県弁護士会111名(内女性14名)、秋田弁護士会78名(同12名)、岩手弁護士会110名(同13名)、仙台弁護士会495名(同79名)、福島県弁護士会195名(同29名)、山形県弁護士会103名(同14名)となっています。女性弁護士は、昨年度より増えてはいますが、女性会員が役員につくことが増えるためにも、女性弁護士の数がもっと増えてもよいと思っています。

 東北弁連と同様となる,他の弁護士会連合会は、各高等裁判所に対応する形で7会(北海道・関東・中部・近畿・中国地方・四国・九州)あります。組織や活動は,日弁連と各弁護士会との間に立ち、日弁連役員や委員の推薦を行ったり、日弁連から各弁護士会への諮問、両者間の協議の仲介等重要な役割を担っています。司法や弁護士会が直面している諸問題に対して、意見表明をしたり、理事会で決議をしたりもしています。
 また、東北弁連は、年に1回、定期弁護士大会を開催して、シンポジウム等を催したり、宣言や決議をしています。今年度は7月5日に青森市で東北弁連の定期弁護士大会が開催される予定です。当日の午前中には、いわれなき差別や偏見を二度と繰り返さぬよう、ハンセン病病歴者やその家族が受けた苦難の歴史を適切に記録化、保存、活用するためにどうしたらよいかとのテーマでシンポジウムを行うこととしています。
 私は、かつて検事であり、2年目・3年目には熊本地方検察庁で勤務をしました。そのときに、国立療養所菊池恵楓園の存在を知りました。そして、このときに初めて、ハンセン病について個人的に知り、深い関心をずっと持つようになりました。そのため、弁護士になってからですが、青森市にあります国立療養所松丘保養園にも行かせてもらいました。私自身、今回の議論にはとても大きな気持ちがあるのです。

 東北弁連では、今年度も様々な諸課題に取り組まなければならないと考えています。主なものとしては、まず、発生から13年を経過した東日本大震災・福島第一原子力発電所事故の問題です。私は、震災の直後、釜石と大槌での法律相談に参加させていただきました。まだまだ、多くの方が復興を目指していると思います。全国各地では、震災や天災が続いております。いずれの災害に対しても、一人一人の被災者の方々の真の人間の復興を目指して支援をしていきたいと考えています。

 刑事事件や民事事件でも気になることがあります。
 刑事事件では、取調べの立会いの問題があります。
 日本の捜査段階における被疑者の取調べは、弁護士の立会いが排除されています。外部からの連絡も遮断されます。いわゆる「密室」での取調べがされているのです。この「密室」においては、捜査官が供述者を威圧したり、利益誘導したりといった違法・不当な取調べが行われることがあります。その結果、供述者が意に反する供述を強いられたり、供述と食い違う調書が作成されたりすることもあります。その精神や健康を害されることがあり得るのです。
 本来的には身柄事件でも取調べの立会いができた方がよいです。しかし、まずは、在宅事件からとなってもよいので、多くの事件で、取調べの立会いができるように取り組んで行ければと思います。

 また、民事事件では、それぞれの地域での開廷の問題があると思います。
 地方裁判所支部や簡易裁判所については、「できるだけ開廷日数を増やして行ければ。少なくとも考慮して行ければ。」と考えています。例えば、二つの簡易裁判所において、一つ目が月に1日、二つ目がその翌日というように連続して2日間開廷されるものの、「その後の1か月は二つの裁判所が開廷されない」ケースが存在するかもしれません。あくまでも例でしかありませんが、これでは、開廷日がうまくいかないために、市民の方の利用が難しくなることもあると思います。
 開廷日をただ増やすだけでは、裁判所の迷惑になることもあると思います。しかし、明らかに少ないままだと、市民が利用できなくなってしまいます。裁判所の開廷日については、「市民が利用しやすいようにしていければ」と考えています。

 まだまだ、この他にもたくさんの問題や課題があると思います。
 日本弁護士連合会で令和6年10月3日,4日に愛知県弁護士会管内において開催されます第66回人権擁護大会が開催されますが、その関連行事として3つのシンポジウムが開催されるとされています。第1分科会が「今こそ、『生活保障法』の制定を!〜地域から創る、すべての人の"生存権"が保障される社会〜」、第2分科会が「これでいいの?法廷内の手錠・腰縄〜憲法・国際人権法から考える〜」、第3分科会が「人権保護としての再生可能エネルギー選択〜地球環境の保全と地域社会の持続的発展を目指して〜」の3つです。このように、多くの問題をみなさんが考えていると思います。東北弁連の皆様が抱えている問題がありましたら、ぜひ提示していただきたいと思います。私たちとしては、その問題の解決に取り組んでいきたいです。

 東北弁連の役員の皆様は、「東北は一つ」という合言葉を述べていました。この言葉のとおり、東北六県の弁護士会の融和と結束をはかりながら困難な諸課題に取り組んで参りたいと思います。
各会の皆様のご支援・ご協力を賜りますよう、お願い致します。

  2024(令和6)年4月6日