遠藤凉一会長

 2022年(令和4年)度の東北弁護士会連合会(東北弁連)の会長を務めることになりました山形県弁護士会所属の遠藤凉一と申します。
就任のご挨拶を申し上げます。
 東北弁連は、弁護士法に基づいて、仙台高等裁判所管内の東北六県の弁護士会で構成されています。東北地方の六弁護士会に所属する弁護士の総数は、2022年(令和4年)3月31日現在で、1060名(内女性151名)です。内訳は、青森県弁護士会109名(内女性15名)、秋田弁護士会74名(同12名)、岩手弁護士会102名(同9名)、仙台弁護士会478名(同73名)、福島県弁護士会193名(同28名)、山形県弁護士会104名(同14名)となっています。男女共同参画社会の実現を目指すためにも、女性弁護士の数は、もっと増えてもよいと思っています。

 東北弁連と同様の弁護士会連合会は、各高等裁判所に対応する形で他に7会あります。組織や活動は概ね同じで、独自の活動のほか、日弁連と各弁護士会との間に立ち、日弁連役員や委員の推薦を行ったり、日弁連から各弁護士会への諮問、両者間の協議の仲介等重要な役割を担っているほか、年1回定期弁護士大会を開催して、宣言や決議を行い、あわせてシンポジウム等を催したり、理事会において対外的な意見についての決議を行うなど、独自の活動も行っています。
 ちなみに、今年度は7月1日に山形市で東北弁連の定期弁護士大会が開催される予定ですが、その午前中には、社会の偏見と差別に晒されている「犯罪加害者家族への国の支援」をテーマにシンポジウムを行うこととしています。
 6年前に山形市で開催された定期弁護士大会において全国の弁護士会連合会として初めて「犯罪加害者家族に対する支援を求める決議」を採択しましたが、今回は、前回の決議以降の支援の状況を振り返り、改めて国に対して支援を求めるという内容が検討されています。

 東北弁連の源流を辿ると、明治21年の宮城控訴院管内代言人懇親会が始まりのようです。その後、同39年から東北弁護士大会、昭和12年に結成された東北弁連を経て、現在の組織の基礎が整ったのは同40年のことです。

 東北弁連は、かつては、親睦を中心とした集まりだったと言われていますが、他方、明治39年の大会では、弁護士自治や弁護士任官に関する議案が提出され、先見性に富む提案を行うなど、単なる親睦団体に止まらない歴史を歩んできました。

 東北弁連では、今年度も困難な諸課題に取り組まなければならないと考えています。主なものとしては、まず、発生から11年を経過した東日本大震災・福島第一原子力発電所事故の問題です。いまだに震災復興から取り残された被災者がいます。復興のハード面の整備は進んでいるようですが、人間の復興はまだまだの状況にあります。原発事故に至っては廃炉まであと何年かかるかも全く不透明な状態です。東北弁連としましては、今後も、これまでの活動で培ってきた災害ケースマネジメントに基づいて、一人一人の被災者の方々の真の人間の復興を目指して支援をしていきたいと考えています。
また、東北ではマグニチュード7級の地震が発生する確率が90%の地域があり、数年前に発生した台風19号の被災問題のほか、新型コロナウイルス問題があります。台風19号の被災問題は一定の道筋が見えているとは言え、追い打ちを掛けるように発生したコロナ禍の問題は、変異株への対応など、未だ収束の道筋さえ不透明な状況です。将来の災害に備えた体制を早急に構築しなければなりません。このように、昨今は地球環境の変化に伴い、毎年のように国内のどこかで大災害が発生しています。災害に対しては、さまざまな団体が連携して初めてケースマネジメントに基づく人間の復興を成し遂げることができます。
広域連携組織である東北弁連としては、被災地の弁護士会のバックアップ組織として、これまでの災害復興支援活動によって得られたスキルとノウハウ等を活用して、適切に対応したいと考えています。

 さらに、東北は、長年、司法過疎・弁護士過疎の問題を抱えてきました。一時に比べて弁護士人口は増え、延べで25箇所のひまわり基金公設事務所が設置され、その多くがそのまま一般の法律事務所として定着し、法テラスの常勤弁護士(スタッフ弁護士)も多数赴任していますが、弁護士過疎が解消されたとは言えません。近年、法曹を目指す人たちが減少していることに加え、地方の弁護士人口が減少して大都市に移っているという弁護士偏在の問題については、今後注意を払う必要があります。他方、東北には司法過疎と言われる裁判所・検察庁の支部問題があり、弁護士過疎と比べて解消の道筋が立っているとは言えない状況にあります。具体的には裁判官が常駐していない裁判所支部や、検察官も常駐していない検察庁支部が多くあります。近年、家事事件が増加し、家庭裁判所調査官の需要が高まっていますが、調査官の配置は未だ不十分です。更に、親子の面会交流の場である裁判所内の児童室の設置がほとんどなされていません。このような、弁護士過疎及び司法過疎が解消されなければ住民の法的ニーズに適切に対応することはできません。東北弁連としましては引き続き弁護士過疎及び司法過疎の問題に取り組んでいかなければなりません。

 東北は、高齢化率が高く、今後の更なる高齢化社会を踏まえて、弁護士会も成年後見制度等の適切な運用に努めなければなりません。また、裁判員制度及び犯罪被害者参加制度が発足して10年を経過しましたが、東北弁連管内の弁護士会の視点に立って、それらの制度の検証も必要です。加えて、デジタル社会に対応した裁判のIT化について国から迅速な対応を求められていますが、東北が抱える支部問題との絡みで、誰でもが、実質的にも十分な司法サービスを享受できるよう、東北弁連として適切に対応していきたいと考えています。

 東北弁連としましては、「東北は一つ」という合言葉を踏まえ、東北六県の弁護士会の融和と結束をはかりながら困難な諸課題に取り組んで参りますので、各会の皆様のご支援・ご協力を賜りますよう、お願い致します。

  2022(令和4)年4月2日