内田正之会長

 2020年度(令和2年度)の東北弁護士会連合会会長を務めることになりました。就任のご挨拶を申し上げます。
 東北弁護士会連合会(以下「東北弁連」と言います。)は、東北六県の各弁護士会で構成される、弁護士法に基づいて設立された弁護士会連合会です。六弁護士会に所属する弁護士の総数は、2020年(令和2年)3月31日現在で、1060名(内女性149名)です。内訳は、青森県弁護士会114名(内女性14名)、秋田弁護士会76名(同13名)、岩手弁護士会103名(同10名)、仙台弁護士会464名(同70名)、山形県弁護士会103名(同15名)、福島県弁護士会200名(同27名)となっています。

 同様の弁護士会連合会は、高等裁判所に対応する形で、全国で八会あります。組織や活動は概ね同じで、日本弁護士連合会(以下「日弁連」と言います。)と各弁護士会との間に立ち、日弁連役員や委員の推薦を行ったり、日弁連から各弁護士会への諮問、両者間の協議の仲介等重要な役割を担っている他、年1回、定期弁護士大会を開催して、宣言や決議を行い、あわせてシンポジウム等を催す、理事会において対外的な意見についての決議を行うなど、独自の活動も行っています。ちなみに、今年度7月に仙台で開催予定の東北弁連の定期弁護士大会が開催の運びとなったときは、午前中に、いわゆるLGBTsと呼ばれる方が、性的指向及び性自認(SOGI)を理由とする偏見や差別により法的不利益を被ることのない、性の多様性が尊重される社会の実現をめざす見地からの、シンポジウムが開催されることとなっております。

 東北弁連の源流を辿ると、明治21年の宮城控訴院管内代言人懇親会が始まりのようです。その後、同39年から東北弁護士大会、昭和12年に結成された東北弁連を経て、日本国憲法や弁護士法の制定等を経て、現在の組織の基礎が整ったのは同40年のことです。

 東北弁連は、親睦を旨とする集まりで、それは明治から今に至るまで変わりはありませんが、他方において、弁護士自治や弁護士任官に関する議案を提出し、先見性に富む提案を行うなど、単なる親睦団体ではありませんでした。

 東北弁連では、今年度も困難な諸課題に取り組まなければならないと考えています。主なものとしては、まず、発生から9年が経過した東日本大震災・福島第一原発事故の問題です。ある部分において復興が進んだ分、逆に、復興が遅れ、あるいは復興から取り残された被災者の問題が顕在化しています。原発事故に至っては復興まであと何年かかるかも全く不明な状態です。人間の復興はまだまだです。東北弁連としましては、災害ケースマネジメントに基づいて一人一人の被災者の方々の真の人間の復興を目指して支援していきたいと考えています。そして、昨年度発生した台風19号の被災問題、そして昨今の新型コロナウィルス問題があります。被災地の弁護士会では、すでに、被災地相談会や他の専門士業との連携による調査活動等を行い、新型コロナウィルス問題についてもQ&A方式によるHPを通じた情報提供や電話相談を実施しております。今後とも、これまで災害復興支援活動を行って来たことで身につけたノウハウ等を活用して、東北弁連としても、タイムリーに、適切な対応を行っていきたいと思います。

 東北は、長年、司法過疎・弁護士過疎の問題を抱えてきました。現在弁護士人口は増え、延べで25箇所のひまわり基金公設事務所が設置され(多くがそのまま一般の法律事務所として定着し、現時点では震災対応型を含めて9箇所)、法テラスの常勤弁護士(スタッフ弁護士)も多数赴任しているなど、解消達成とまでは言えなくとも、弁護士過疎は解消が進んで来ております。他方、裁判所・検察庁の支部問題と呼ばれている司法過疎問題は、弁護士過疎と比べて解消の道筋が立っているとは言えない状況にあります。具体的には裁判官が常駐していない裁判所支部、検察官も常駐していない検察庁支部が多くあります。近年、家事事件が増加し、家庭裁判所調査官の需要が高まっていますが、調査官の配置は未だ不十分です。更に、親子の面会交流の場である児童室の設置がほとんどなされていません。弁護士過疎及び司法過疎が解消されなければ住民の法的ニーズに適切に対応することはできません。東北弁連としましては引き続き弁護士過疎及び司法過疎に取り組んでいかなければなりません。

 東北は、高齢化率が高く、高齢化社会に対して弁護士会も成年後見制度等の分野において適切に対応していかなければなりません。また、裁判員制度及び犯罪被害者参加制度が発足して10数年が経過し、それらの制度のさらなる検証も必要です。加えて、政府から裁判のIT化について迅速な対応を求められており、東北にとっては前述の支部問題との絡みもあって、老若男女を問わず、実質的にも十分な司法サービスを享有できるよう、適切な、しかも決して容易ではない対応が求められています。

 東北弁連としましては、「東北は一つ」という合言葉を踏まえ、また、今般、東北の弁護士会からはじめての日弁連会長が誕生したといったことを新たなきっかけとして、さらに東北六県の弁護士会の融和と結束をはかりながら困難な諸課題に取り組みたいと考えております。各会の皆様のご協力を賜りますよう、お願い致します。