2012年10月1日、沖縄県宜野湾市の普天間飛行場に、垂直離着陸輸送機MV‐22オスプレイが配備され、以来沖縄において訓練飛行が続けられていたが、2013年3月6日からは四国上空でも低空訓練飛行が開始され、夜間訓練も行われている。
 東北六県においても、奥羽山脈沿に設定された「ピンクルート」、「グリーンルート」、山形県南部から新潟、富山各県方面へ伸びる「ブルールート」において高度150メートル以下での訓練飛行が計画され、早晩オスプレイが東北地方の空を飛ぶものと考えられる。

 オスプレイは、垂直離着陸できる輸送機であるが、オートローテーション機能(エンジン停止時に、機体が落下する際に生じる気流を利用して安全に着陸する機能)に欠陥があり、回転翼機モードから固定翼機モードへの切り替え時の不安定さ、風(気流)の影響を受けやすい操縦性、小さな操縦ミスも許さない設計等、多くの構造的欠陥があることが指摘されている。
 このため、オスプレイは開発段階から事故を繰り返しており、2006年量産体制に入った後も事故が絶えない(2006年から2011年まで大小58件の事故発生が報道されている)。2012年4月にはモロッコで訓練中に墜落したことにより2名が死亡する事故を起こし、さらに6月にもフロリダ州で訓練中に墜落したことにより5名が負傷する事故を起こし、7月には米ノースカロライナ州で民間空港に、9月には同州で市街地に各々緊急着陸するなど、その安全性には大きな疑念がある。

 上記事実からすれば、オスプレイは墜落発生など高い危険性を有する機種であるといわざるをえない。
特にオスプレイが配備された普天間基地は、宜野湾市の市街地のただ中に位置し、「世界一危険な飛行場」と言われ(2010年7月29日福岡高裁那覇支部判決)、ひとたびオスプレイの墜落事故が起きれば大参事に至ることは免れない。また、オスプレイは今後、沖縄県内だけでなく、東北六県を通過する3ルート(「グリーン」、「ピンク」、「ブルー」)を始め、20県にまたがる7ルートにおいて低空飛行訓練を行うことが計画されており、オスプレイの飛行による墜落の危険や騒音・低周波被害、回転翼による強い下降気流等による環境破壊の危険は、沖縄県にとどまらず、東北六県そして全国に広がる危険が大である。

 このように、オスプレイを配備したこと及び今後低空飛行訓練が予定されていることは国民の生命・身体の安全に対する重大な脅威である。
日米両政府は9月、国民の不安に対し、オスプレイの飛行ルールを合意したが、①学校を含む人口密集地の上空を極力避けて飛行する、②運用上必要な場合を除き、ヘリモード飛行は米軍基地内に限る、などの合意は早々に破られている。又、1996年には午後10時から午前7時までの離着陸を必要最小限度にするとの騒音協定を結んでいるが、その実効性はなく、米海兵隊の環境審査報告書によれば、オスプレイが配備されることによって普天間基地における夜間、早朝の離着陸の回数が著しく増大し、基地周辺の住民の生活を圧迫することが予想され、現実に沖縄では夜間飛行が激化し、日常生活に大きな支障を与えている。
 更に、森本敏防衛大臣(当時)の国会答弁によれば、オスプレイは地上約60メートルで飛ぶ場合があるとされているが、これは航空法・同施行規則が定める最低安全高度(150メートル。人口密集地では300メートル)を大幅に下回ることになる。このような超低空飛行が行われれば、東北六県においても、墜落の危険、騒音・低周波被害,環境破壊がますます高まることが懸念される。
このように、オスプレイが強行配備され、その訓練が続けられることは、東北六県を含む全国民の生命、身体に対する侵害のおそれを生じさせるものであり、憲法が人格権(13条)、平和のうちに生存する権利(前文、9条、13条など)等の基本的人権を保障している精神に強く反する。
 よって、当連合会は、日米両政府に対し、普天間飛行場へのオスプレイの配備撤回及び日本国内の領土におけるオスプレイの飛行の全面中止を強く求める。

2013年(平成25年)3月30日
東北弁護士会連合会
会長 中 林 裕 雄