
大飯原子力発電所再稼働決定の撤回等を求める会長声明
1 政府は、本年6月16日、定期検査のために停止中の関西電力大飯原子力発電所3・4号機について、暫定基準やストレステストの一次評価により安全性が確認されたことを理由として、再稼働させることを決定した。
しかしながら、国民に深刻な被害を与えた福島第一原発事故については、事故から既に1年以上を経過しているにも関わらず未だ政府・国会の事故調査委員会も調査を続けており、原因の解明はなされていない。
政府の根拠とする暫定基準は正に暫定的なものに過ぎず、未だ継続中である福島第一原発事故の原因調査の結果が反映されたものでないことはもとより、地震、津波に関する知見を十分に反映したものでもない。
かかる状態において、安全性が確保されたとは到底認めがたいものである。
2 のみならず、多くの国民は、福島第一原発の悲惨な事故を目の当たりにして、原発に頼らないエネルギー政策への抜本的な転換を求めている。日本弁護士連合会は、2011年(平成23年)7月15日付「原子力発電と核燃料サイクルからの撤退を求める意見書」において、原発廃止への道筋を提言した。当連合会においても、本年7月6日開催の当連合会定期弁護士大会において、「原子力発電と核燃料サイクルの廃止に向けて」をテーマとしたシンポジウム等を行うこととしている。ほかにも、多くの弁護士会や団体が原発の再稼働に反対の意見を表明している。
政府の決定は、このような国民の意見を無視するものであり、容認できない。
3 そもそも、福島第一原発の事故によって、東北地方では、福島県を中心として多くの国民が今も避難生活を余儀なくされ、被ばくの不安にさらされている。のみならず,被害者の生活や財産、営業、雇用、教育、地域コミュニティーなどは根底から破壊され、重大な人権侵害状態が今も継続している。
原発の安全性や必要性を十分に検証しないまま再稼働し、同様の事故が起きた場合には、もはや日本社会にとって取り返しがつかない事態を招来することは明らかである。
国民の生命と安全を守るべき義務を負う政府が、かかる状況にも関わらず原発再稼働の決定をしたことは無責任との非難を免れない。
4 よって、当連合会は、政府に対して、大飯原子力発電所の再稼働決定を直ちに撤回することを強く求める。
合わせて、同発電所を含む全ての原子力発電所の運転を停止した状態のまま、原子力政策や原子力発電の安全性に関する国民的な議論を十分に尽くすことを求めるものである。
2012年(平成24年)6月27日
東北弁護士会連合会
会長 中 林 裕 雄
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