1 福島第一・第二原子力発電所事故による損害賠償にかかる和解仲介の手続を実施する組織として「原子力損害賠償紛争解決センター」(以下「センター」という)が設置され,本年9月1日より,和解仲介申立ての受付が開始されている。このセンターの和解仲介手続により,上記原子力発電所事故の被害者(以下「原発事故被害者」という)に対し,迅速かつ適正な損害賠償が実施されることが期待される。

2 この和解仲介申立てを受け付けるセンター事務所は,現在,福島(郡山市)と東京の2カ所に設置されている。しかし,原発事故被害者は,親族や受入先の自治体等を頼り全国各地に避難しており,特に福島県内及びその周辺の各県では多くの原発事故被害者が避難生活を送っている。そのため,センター事務所から遠方に避難している多くの被害者にとっては,センターの和解仲介手続を利用することは著しく困難な状況にある。

3 福島県弁護士会が,本年8月28日に,福島県内6カ所で実施した原発事故損害賠償説明会には,説明会会場1カ所について約150名から400名,合計約1500名もの参加者があり,原発事故被害者が県内全域で避難生活を送っており,それぞれの地域において和解仲介の需要があることが明らかとなった。

4 また,福島県の近隣の各県においても,多数の避難者が存在するばかりでなく,多くの地域住民が直接的な原発の被害を被っていることからすると,和解仲介の需要も相当な数に上るものと予想される。さらには,避難者が全国に分散している状況に鑑みれば,センターを利用したいとの需要は,全国各地に存するものと考えられる。

5 以上のような状況に鑑み,当連合会は,多くの原発事故被害者に迅速・適正な損害賠償が実現されるよう,国に対し,センターの和解仲介手続を実施する場所について,下記のとおり要望する。

(1)原子力損害賠償紛争解決センターにおける和解仲介手続を,福島及び東京の2カ所の事務所のみにおいて実施するのではなく,全国各地に避難している被災者が容易に利用できるよう実施場所を増設し,特に東北においては各県に実施場所を設置すること。
(2)上記和解仲介手続について,福島県内においては,少なくとも福島市,郡山市,白河市,会津若松市,いわき市,相馬市及び南相馬市の各市に実施場所を設置すること。

2011年(平成23年)10月1日
東北弁護士会連合会
会長 廣嶋清則