被疑者・被告人(以下「被疑者等」という。)が弁護人に依頼することは憲法上の権利であり、最大限尊重されなければならない(憲法34条前段)。被疑者等には、この弁護人依頼権に由来する権利として、弁護人と立会人なくして接見する権利が保障されている(刑事訴訟法391項)。弁護人依頼権及び接見交通権は、無罪推定の権利を有する被疑者等の防御を実効化し、冤罪を防止するために不可欠な権利である。

また、無罪推定の権利を有する被疑者等の勾留は厳格な要件の下でなされなければならず、勾留場所は、本来、捜査当局と分離された刑事施設(拘置所・拘置支所等)とされている。これは、留置施設での身体拘束は、捜査当局でもある警察自身が被疑者等を管理し、全生活を支配するという危険性を必然的に有し、自白強要等違法不当な捜査による冤罪の温床となる危険があるためである。日本弁護士連合会も、留置施設を勾留場所とする「代用監獄」制度の廃止を訴えている。

しかし、「代用監獄」制度は長年継続している。そればかりか、本来勾留場所として確保されるべき地方の刑事施設の収容停止・廃止が行われている。

加えて、近年、警察署の留置担当官が身体拘束中の女性の被疑者等に対してわいせつ行為を行ったとして逮捕される事案が連続して発生したことが発端となり、全国各地において女性の被疑者等を身体拘束する警察署の留置施設の集約が進められている。東北地方においても、女性用の留置施設は、各県に1か所又は2か所にまで集約化された(以下「本件集約化」という。)。

刑事施設の収容停止・廃止及び本件集約化により、選任される弁護人の執務地域と刑事施設及び女性用留置施設が地理的に隔絶され、移動に長時間を要するケースが増加し、結果的に接見の回数や時間が制限されることになった。

福島県弁護士会において、女性用留置施設が県内1か所に集約されたことによる弊害を調査したアンケート結果によると、移動時間の増大による弁護活動における具体的な弊害が指摘されている。また、家族や関係者が、被疑者等との面会を経済的・時間的な理由から断念させられており、被疑者等の心身の安定が阻害されるおそれが大きい。そして、その結果、捜査当局による取調べの圧力に対する耐性が損なわれ、虚偽自白を誘発する危険性もある。

このような状態は、女性の被疑者等の防御権を実質的に制限するものであり、冤罪防止に逆行するものであって到底容認できない。

そして、本件集約化は、女性の被疑者等のみに上記のような重大な不利益を課すものであって性別による差別であるところ、その導入目的はもっぱら警察の内部事情にすぎず、正当性は認められない。したがって、本件集約化は性別を理由とする差別に該当し、平等原則(憲法141項)に違反する。

よって、本件集約化は撤回されるべきである。そして、「代用監獄」は将来的に廃止されるべきであり、勾留場所は刑事施設とされるべきである。

被疑者等の勾留については、その要件の厳格な審査を行い、仮に勾留決定又は勾留請求をする場合であっても刑事施設を勾留場所に指定すべきである。とりわけ本件集約化の弊害を受ける女性の被疑者等については一刻も早くそのように運用を改めるべきである。

また、このような適正な運用がなされるためにも、刑事施設の適正配置が確保されるべきである。

当連合会管内においては、遠隔地に刑事施設・留置施設(以下「刑事施設等」という。)がある地域も多く、それに加え、冬期になれば積雪や吹雪等によって移動自体が困難となり、接見交通に重大な支障をきたすおそれが大きい。こうした支障を克服し、弁護人・弁護人となろうとする者(以下「弁護人等」という。)による機動的な接見を実現するためには、地理的条件を問題としないオンライン接見が極めて重要な意義を有し、かつ、被疑者等の有する権利として秘密接見が保障されなければならない。

しかしながら、第217回国会において成立したいわゆる刑事デジタル法では、刑事施設等に勾留される被疑者等と弁護人等とのオンライン接見が盛り込まれなかったことは問題である。

オンライン接見は、重要な対面による接見を補完し、被疑者等と遠隔地にいる弁護人等との迅速な接見を可能とするものであり、早期に実現されるよう法整備を進めるべきである。

 

以上を踏まえ、当連合会は、被疑者等の人権とりわけ防御権を擁護するため、下記の事項を求める。

1 勾留場所について

1)裁判官及び検察官に対し、勾留要件の厳格な審査を行い、仮に勾留決定又は勾留請求をする場合であっても被疑者等の勾留場所を被疑者等の性別を問わず刑事施設(拘置所・拘置支所等)とすること

2)国に対し、すべての被疑者等を刑事施設で勾留できる体制を整備すること

3)警察庁及び東北管内各県警察本部に対し、女性の被疑者等を身体拘束する女性用留置施設の集約化を撤回すること

2 国に対し、弁護人等が被疑者等とのオンライン接見を実現できるようにするための法整備を早期に進めること

 

以上のとおり決議する。

2025年(令和7年)74

東北弁護士会連合会

 

提案理由

 

1 女性用留置施設の集約化

1 集約化の現状

近年、全国各地において女性の被疑者等を身体拘束する警察署の留置施設の集約化が進められている。

現在判明しているところでは、女性用留置施設が都道府県に1か所のみなのは、秋田、岩手、福島、山梨、富山、福井、鳥取、山口、徳島、香川、愛媛、高知、佐賀、大分、宮崎の15県警であり、近年、増加傾向にある。

2 集約化に関する事実経過

2022年(令和4年)当時、全国において留置担当官が身体拘束中の女性の被疑者等に対してわいせつ行為を行ったとして逮捕される事案が連続して発生した。

そのため、警察庁は、2023年(令和5年)121日付け「『留置管理業務推進要領』の一部改正について(通達)」により、各都道府県警に対し、適切な留置管理体制の構築のため、女性専用留置施設(女性の被疑者等のみを留置し、女性警察官が常時看守業務に従事する留置施設をいう。)の設置を推進することを指示した。

同指示を受けて、各都道府県警察本部は、女性用留置施設の集約化を進めた。東北地方の女性用留置施設の集約化の状況(現在)は下記のとおりであり、いずれの県においても女性用留置施設が減少し集約されている。

県名

女性用留置施設

青森

青森警察署(青森市)、八戸警察署(八戸市)

秋田

秋田中央警察署(秋田市)

岩手

原則:盛岡東警察署(盛岡市)、例外:岩手警察署(岩手町)

山形

上山警察署(上山市)、鶴岡警察署(鶴岡市)

宮城

仙台中央警察署(仙台市)、若林警察署(仙台市)

福島

原則:郡山北警察署(郡山市)、例外:郡山警察署(郡山市)

 

しかしながら、身体拘束中の女性を含む被疑者等の人権とりわけ防御権を擁護するためには、警察署の留置施設ではなく、原則にしたがって拘置所・拘置支所等の刑事施設で勾留されるべきである。

 

2 被疑者等の勾留場所を刑事施設(拘置所・拘置支所)とすべきであること

刑事訴訟法上、被疑者等を勾留すべき場所は刑事施設(拘置所・拘置支所等)である(同法641項)。

また、国際人権(自由権)規約(日本は1979年(昭和54年)に批准)は、刑事上の罪に問われて身体を拘束された者は速やかに裁判官の面前に連れていかれ、その後は捜査機関に戻されてはならないことを定めている(同規約93項)。

ところが、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律は、刑事施設に収容することに代えて、警察署の留置施設に被疑者等を留置することができると規定している(同法151項)。留置施設は、逮捕段階の一時的に留め置く場所としてのみ利用されるべきものであって、本来の勾留場所ではない。あくまでも代用刑事施設でありいわゆる代用監獄に過ぎない。

代用監獄での身体拘束は、捜査と留置の分離が一応なされているとはいえ、捜査当局でもある警察自身が被疑者等を管理し、全生活を支配するという危険性が必然的につきまとうものである。前述の留置担当官による女性の被疑者等に対するわいせつ行為の発生は、被疑者等の全生活を支配する代用監獄の危険性が顕在化したものといえる。

また、留置施設における勾留は、自白強要と冤罪の温床となる。過去には免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件、袴田事件の死刑再審事件において、虚偽の自白が強要されたことが明らかとなり、再審無罪が確定した。現在も、例えば大川原化工機事件(令和382日東京地裁公訴棄却決定、令和7528日東京高裁国家賠償請求事件判決〔警視庁公安部と検察の捜査の違法性を認め、東京都と国の責任を断罪。判決確定。〕)にみられるとおり、留置施設での勾留を圧力として利用した取調べが、行われ続けている。

以上を含む問題を解決するためには、被疑者等の勾留場所は、捜査当局と分離された刑事施設が適しているが、近年、効率化等の観点から、地方の刑事施設の収容停止・廃止が行われている。当連合会管内では、鶴岡拘置支所(山形県)、大曲拘置支所(秋田県)及び弘前拘置支所(青森県)の収容停止・廃止がすでに行われており、今後、一関拘置支所(岩手県)が廃止される予定である。

そもそも、被疑者等が防御を実効化するため弁護人を依頼し、その助言を得ることは憲法上の権利であり、最大限尊重されなければならず(憲法34条前段)、この弁護人依頼権に由来する権利として、弁護人との接見交通権が定められている(刑事訴訟法391項、平成11324日最高裁判決「安藤・齋藤国賠事件」)。この具体化として、弁護人が、被疑者等に対して取調べの対応等について適切な助言を行い、示談交渉、社会復帰した際の環境調整及び公判準備等を適正かつ円滑に行う上で、接見の機会は十分に確保されなければならない。

そのためには、裁判官及び検察官は、勾留要件の厳格な審査を行い、仮に勾留決定又は勾留請求する場合であっても、刑事施設を被疑者等の勾留場所とすべきである。そのために、国は、刑事施設を収容停止・廃止するのではなく増設し、すべての被疑者等を刑事施設に勾留できる体制を整備すべきである。

 

3 女性の被疑者等を身体拘束する警察署の女性用留置施設の集約化を撤回し、勾留場所の適正配置を行うべきであること

1 本件集約化の問題点

本件集約化は、選任される弁護人の執務地域と勾留場所又は勾留場所と犯罪行為地・公判場所が地理的に隔絶され、移動に長時間を要するケースが増加し、結果的に接見回数や接見時間又は示談交渉等の弁護活動に制限を生じさせる。

当連合会管内には、降雪により交通途絶となる地域もあり、交通手段も限られる状況にあるため、弁護人が、接見のために長時間の移動を強いられる状況になれば、接見回数が結果的に制限されることになるのは自明である。それにもかかわらず、捜査当局は、地元弁護士会との協議や調整もなく、本件集約化を一方的に開始した。

また、被疑者等とその家族との面会が困難となることにより、突如として日常生活を奪われる被疑者等の精神的・経済的な負担等が生じるおそれがある。

このように、本件集約化は、女性の被疑者等の人権とりわけ防御権を大きく制約する危険性を有するものである。

2 福島県弁護士会のアンケート結果で明らかとなった本件集約化の具体的な問題点

⑴ 福島県においては、2024年(令和6年)3月より、県内4地域にあった女性用留置施設が原則として郡山北警察署1か所に集約された。

福島県弁護士会は、これに反対する会長声明を発出することに加え、同年7月、会員に対し、集約化により生じた問題点を整理し、改善を図ることを目的としてアンケートを実施し、47名の会員から回答を得た(以下「本件アンケート」という。)。

本件アンケートの回答者のうち43名が、女性用留置施設の集約に反対しており、これに賛成する者はいなかった。反対の主な理由は、接見に伴う移動時間の増大が女性の被疑者等の防御権の侵害になること(具体的には後記⑵ア乃至ウ)、②家族等が被疑者等と面会することが困難になることにある(具体的には後記⑶)。

⑵ア 全国で3番目の広さを有する福島県に女性用留置施設が1つしかなく、面会室も1つしかないことの弊害は極めて大きい。

福島県弁護士会では、従前、被疑者等の国選弁護人は勾留場所に近い支部の弁護士が担当する運用を取ってきた。しかし、女性の被疑者等が郡山北警察署に集約されると郡山支部の弁護士に事件配点が集中する等により弁護活動に支障が生じるおそれがあったことから、女性の被疑者等の事件配点については事件を取り扱う検察庁が所在する各支部の弁護士に行うこととした。仮に、勾留場所に近い支部の弁護士が担当すれば接見の移動時間は短くて済むが、犯罪行為地・公判場所と隔絶することになり、示談交渉、環境調整及び公判準備等に支障がある。このように、弁護士会による事件配点の在り方を工夫するだけでは、集約化に対応することはできない。

本件集約化前のように、女性の被疑者等が4地域の警察署に身体拘束されていた状況であれば、各支部の弁護士は早ければ10分程度で勾留場所に赴くことができた。

しかし、女性の被疑者等が郡山北警察署に身体拘束されることになり、郡山支部以外の弁護人のほとんどが、移動時間に片道1時間以上費やすこととなり、女性の被疑者等の接見に要する時間が大幅に増加した。

イ 郡山北警察署の面会室は1室しかなく、弁護人による接見が競合し、待たされることも珍しくない。本件アンケートの回答によると、1時間以上待たされた会員や接見を断念した会員がいた。

ウ また、外国人事件の場合、通訳人との予定を合わせることが難しくなり、接見の日程調整が難しくなったという回答もあった。

⑶ 被疑者等の家族からも、移動に伴う負担が大きいという意見が出されている。

弁護人から寄せられた被疑者等の家族や関係者からの声として、「長時間かけて長距離移動してきたのに、取調べ等のために会えなかった場合の負担が大きい。生活保護受給者の場合は経済的な面から接見が制限されてしまう。」、「夫が福島市から平日毎日被疑者に会いに面会に行っており、面会だけで半日潰れてしまう。経済的にも余裕がなく、精神的にも追い詰められているようだった。」というものがあった。

身体拘束をされた被疑者等にとって、家族や支援者との面会は身体拘束による苦痛を和らげるものであり、無罪推定の原則からすれば、法律で認められた場合を除き面会を制限されるいわれはない。とりわけ貧困により旅費が捻出できないことを理由として身体拘束された家族と面会ができないという事態は避けられるべきであるが、本件集約化以後、実際に貧困により身体拘束された家族と面会ができない事態が発生している。

家族や支援者との面会が制限されることにより、被疑者等の心身の安定が阻害されるおそれがある。このことにより、捜査当局による取調べの圧力に対する耐性が損なわれ、虚偽自白を誘発する危険性もある。

⑷ 本件アンケート結果からは、本件集約化によって女性の被疑者等と弁護人等との迅速な接見が妨げられていることや家族との面会が困難になっている実態が浮き彫りとなった。

当連合会を構成する弁護士会は、いずれも管轄地域の面積が広大であるという特徴を有しており、本件アンケートに現れている問題は福島県弁護士会以外でも発生している問題と考えられる。

⑸ 本件

集約化は、被疑者等に認められた接見交通権を実質的に侵害するものであり、違法不当な捜査・冤罪の温床となり得る代用監獄を原則として用いる点で不当である。

3 本件集約化は性別を理由とする差別に該当し、平等原則に反すること

被疑者等のうち女性のみが、その性別を理由として本件集約化がなされたが、その区別取扱いについて合理的根拠が認められない場合には憲法141項で定められた平等原則に反することとなる。

福島県警察本部は、福島県弁護士会に対し、警察署の留置担当官による女性の被疑者等に対する性犯罪を防ぎ処遇改善を図ること、身体拘束を要する女性の被疑者等が減少していることが理由であると説明した。

留置担当官による性犯罪を防ぐという観点から言えば、留置担当官に対する指導教育体制の確立強化、適切な予算と人員確保と配置、職員に対する監視体制の強化等といった女性の被疑者等に不利益を課さない手段を取ることにより対応すべきである。女性の被疑者等の性被害を防止するために、女性の被疑者等に対して不利益を課すことは本末転倒である。

さらに、身体拘束を要する女性の被疑者等が減少していることから県内1か所に集約することとしたとの説明には、女性の被疑者等の人権への配慮がいささかも感じられない。

本件集約化は、もっぱら警察の内部事情によって集約化を導入したことを明らかにするものであり、性別を理由とする区別取扱いの合理的根拠を認めることは困難である。

そのため、本件集約化は、平等原則に反するものといえる。

4 小括

以上より、本件集約化は、女性の被疑者等の接見交通権を侵害し、代用監獄を原則として用いる点で不当であり、かつ平等原則にも反するものであることから撤回されるべきである。東北地方の地域特性に鑑み、勾留場所の適正配置が行われるべきである。

そして、裁判官及び検察官は、とりわけ本件集約化の弊害を受ける女性の被疑者等について、一刻も早く刑事施設を勾留場所に指定するよう決定又は請求すべきである。

 

4 弁護人等が、被疑者等とのオンライン接見が実現できるようにするための法整備を早期に進めること

1 刑事手続における情報通信技術の活用に関する立法状況

217回国会において、情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律が成立した(以下「改正法」という。)。

改正法には、電磁的記録による令状の発付・執行等に関する規定の整備、刑事施設等との間における映像と音声の送受信による勾留質問・弁解録取の手続を行うための規定の整備及び映像と音声の送受信による裁判所の手続への出席・出頭を可能とする制度の創設等が盛り込まれた一方、刑事施設等にいる被疑者等と弁護人等との間の映像及び音声の送受信により行う接見(以下「オンライン接見」という。)について取り上げられなかったことは問題である。

2 オンライン接見は充実した接見交通権の実現に不可欠である

すでに述べたとおり、被疑者等にとって弁護人等との接見交通権は、憲法上保障された弁護人依頼権(憲法34条前段)に由来する重要な権利である。

弁護人等による接見は、身体を拘束された被疑者等にとって、自身の正当な権利行使の手助けをしたり、外部との交通を遮断された被疑者等の孤独や不安を解消したりするために重要な役割を果たすものであり、なかでも、逮捕直後の初回接見は、身体を拘束された被疑者によって、弁護人等の助言を得る最初の機会であり、憲法上の保障の出発点を成すものであるから、速やかに行うことが被疑者の防御の準備のために特に重要である(平成12613日最高裁判決「内田国賠(第2次)事件」)。

また、公判準備及び公判の段階でも、身体を拘束されている被告人が証拠を検討し、防御を尽くすために、弁護人との充実した接見の機会が保障されなければならない。

しかし、弁護人等が刑事施設等を訪問しない限り接見をすることができない現状においては、被疑者等の勾留場所と弁護人等の法律事務所との間に距離がある場合、被疑者等は迅速かつ充実した弁護人等の援助を受けることができない。

特に当連合会管内においては、遠隔地に刑事施設等がある地域も多く、それに加え、冬期になれば積雪や吹雪等によって移動自体が困難となり、接見交通に重大な支障をきたすおそれが大きい。

また近年、地方の拘置支所の収容停止・廃止や警察署の留置施設の集約により、そのような深刻な不利益の生じるおそれは増大している。

地理的条件を問題としないオンライン接見は、こうした支障を克服し、弁護人等による機動的な接見を実現する制度として極めて重要な意義を有するものである。

情報通信技術を用いることによる刑事手続の効率化が現に立法化されつつある現在においては、弁護人等と被疑者等との間の接見交通についても同様の情報通信技術を用いて効率化を図ることが可能かつ現実的である。

したがって、対面による速やかな接見が重要であることは言うまでもないが、被疑者等の弁護人依頼権の保障を充実させるため、オンライン接見は、権利性を有する法律上の制度として整備され、国家予算を投じて運営されなければならない。

3 オンライン接見の実現に向けた課題

オンライン接見の具体的な方法については、弁護人等が最寄りの刑事施設等に赴き、当該刑事施設等に設置された端末を用いて、被疑者等が所在する刑事施設等に設置された端末にアクセスし、被疑者等と映像と音声を送受信する方法(以下「アクセスポイント方式」という。)にて接見を行う方法が現実的であり、当連合会も、アクセスポイント方式によるオンライン接見の実現を求めるものである。

これに対し、一部の刑事施設等においては、現在、電話を用いた外部交通が行われており、この運用を、テレビ電話を用いて外部交通ができるようにする方法に拡大していく方向での議論がある。

しかしながら、当該方式については、当連合会が求めている権利としてのオンライン接見とは異なり、あくまで運用に過ぎない上、刑事施設等の職員が聴取し得る状況で行われており、弁護人等と被疑者等との間の会話について秘密が保障されているものではない。

被疑者等が適切に防御権を行使し、裁判に向けて充実した準備を行うためには、弁護人等と被疑者等とが、打合せ内容を他者に見聞きされることのない環境において打合せを行うことが欠かせない。

したがって、現在一部の刑事施設等で行われている電話等を用いた外部交通の拡大を行うことでは全く不十分なのであって、オンライン接見の導入にあたっては、接見の秘密が制度として保障されなければならない。

このようなオンライン接見の実現に対しては、設備や人員を配置するための経済的負担を指摘する意見もある。

しかしながら、改正法においては、令状をタブレット端末で示す方法のほか、検察庁にいる検察官が、刑事施設等にいる被疑者からオンラインで弁解録取を行う方法や、裁判所にいる裁判官が、同じく刑事施設等にいる被疑者に対しオンラインで勾留質問を行うことができるものとされている。

このように、新たな設備の導入は、情報通信技術を用いた刑事手続効率化全般に必要なのであり、オンライン接見についてのみことさら経済的負担を問題視することは不合理である。

オンライン接見については、刑事訴訟法391項に規定される権利と位置付けることにより、設備や人員を配置するための十分な予算措置を講じることも可能となるし、仮に全国一斉に導入することが困難であれば、弁護人等の事務所所在地と被疑者等の所在する刑事施設等の距離が離れている地域から導入し、順次、人員の拡大を図ることも考えられる。

したがって、設備や人員を配置するための経済的負担の問題は、オンライン接見の導入を否定する理由とはならない。

なお、オンライン接見が導入されることは被疑者等の防御権の行使に資するものであるが、これが導入されることをもって、本件集約化が正当化されることがあってはならない。

弁護人等と被疑者等との接見については、対面によって行うことにより相互の信頼関係が醸成されるほか、弁護人が非言語的な情報を得たり、円滑なコミュニケーションを図ることが可能となったりするのであり、オンライン接見が実現したとしても、対面による接見の重要性はいささかも揺らぐものではない。

被疑者等の精神状態の安定や、更生に向けた環境整備のためには、弁護人等以外の家族や支援者等との一般面会も重要であり、そのためには、被疑者等が生活の本拠を置く場所の近くに収容施設があることが必要である。

また、本件集約化は、所管する警察組織がその裁量に基づき内部的に推し進めている運用に過ぎず、当該運用を自ら変更しさえすれば、特段の立法措置を待たずして早期に改善が期待できる問題である。

現時点では法制化に向けた具体的な歩みすら始まっていないオンライン接見を盾に、本件集約化の問題について改善を拒むことは、女性用留置施設の集約化自体が大きな人権侵害の危険をはらむものであることに鑑み、裁量権の範囲を逸脱するものと言わざるを得ない。

4 小括

以上より、弁護人等と被疑者等との間におけるオンライン接見が早期に実現できるようにするための法整備を進める必要がある。

 

5 結語

よって、当連合会は、被疑者等の人権とりわけ防御権を擁護するため、

1 勾留場所について、

①裁判官及び検察官に対し、勾留要件の厳格な審査を行い、仮に勾留決定又は勾留請求をする場合であっても被疑者等の勾留場所を被疑者等の性別を問わず刑事施設(拘置所・拘置支所等)とすること

②国に対し、すべての被疑者等を刑事施設で勾留できる体制を整備すること

③警察庁及び東北管内各県警察本部に対し、女性の被疑者等を身体拘束する女性用留置施設の集約化を撤回すること

を求め、

2 国に対し、弁護人等が被疑者等とのオンライン接見を実現できるようにするための法整備を早期に進めること

を求めるものである。

以上

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